人形渡橋の秘密 第4話

 あれから、とりあえず地元の郷土資料をあたった。

 神戸市立図書館北区分館。ここは神戸市北区に関する郷土資料が集められたコーナーがある。幸運にも、長尾町の資料までたどり着き、人形渡り橋の写真と説明までは見つけることができた。しかしやはり何故人形渡りなのか、については触れられておらず、歴史的な背景も書かれていなかった。古来からあるならまだしも、平成に入ってから作ったものでは図書館で調べられるのはここまでではなかろうか、と思い本を閉じた。

 やはり現地地元民から情報を得るのが近いだろうと思い、今日は人形渡り橋周辺の公共施設を調べる作業から始まった。公民館を見つけたので、行こうと思ったがgoogle衛星写真で見ると田園のど真ん中にあり車が留められそうにない。最寄の駅から徒歩で向かうこととなった。

 歩くこと一時間半。田園の真ん中で迷った。携帯のEZナビウォークを起動すると、わりと良いポジションに来ていることがわかった。が、公民館と表示されている場所には、普通の民家しかない。いったいどういうことか。民家の形をした公民館なのだろうか?しかし公民館の表示もないので入って良いものかどうかも怪しい。入ったとしてもここで郷土情報は……そのへんの農夫の爺さんに聞いたほうがよいのでは。

 とりあえず、腹も減ったので戻ることにした。と、帰りの道の途中の看板に

 よくばり地蔵 人形供養 次の交差点右

 と書いてある。人形供養、はひょっとすると橋と関係しているかもしれない。看板を頼りにさらに30分ほど歩いた。

 そこは小さなお寺だった。階段を登り境内に入ると、砂場に人形供養の看板があった。どこかに詳細な由緒などが無いか探したが、見つからず、よくばり地蔵様を眺めていると奥から神社の方が出てこられた。ここは、関西でも最大規模の人形供養が7年ほど前から行われている場所らしい。しかし、人形渡り橋のことを聞くと、関係があるかどうかはわからないと言われた。これだけ大きな人形供養の場で関係がないとなると、やはり橋を作った神戸市に直接問い合わせるしか手はないのかもしれない。人形供養チロルチョコをひとつもらって、帰路についた。

 北神戸の田園風景は、都会の中で忘れていた昔の空気をいまだ保っているように感じられた。

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