眼の石版

「こんにちは」
「あ・・・よう、久しぶり」
 屋内コンサートの帰り、久々に出会ったその人はタクシーに乗る前に俺に一言だけ挨拶をした。そしてすぐにタクシーは発車した。行き先は多分屋外のコンサート場だろう。このコンサートにはまだ続きがある。
 俺は駐輪場へ向かった。屋外コンサートの会場の近くの公民館に自転車を停めるところがあるはずだ。
 駐輪場を出てすぐ、変な少年が俺に絡んできた。
「おいおい、兄ちゃん。ちょっとそこ邪魔なんだけど」
「なら先に行け」
 俺がそういうとその少年は何も言わずに自転車をこぎ出した。俺も屋外コンサートの会場を目指した。
 コンサートは始まっていた。間違えないで旋律を弾けたら30万円とかいう企画をやっていて、ギターを弾いていた小堺さんに難しい曲があたって失敗していた。結局もらったのは60万くらいのドラムセットを買う金の足しにするという、金持ちっぽい親子のピアノ連弾だった。絶対この二人の曲だけ簡単で卑怯だと思ったが何も言うことができなかった。
 山根麻衣にサインをもらおうとしたがサイン色紙とペンを持っていないことに気付いてやめた。こういうときは他の楽器とかにサインしてもらうものなのだろうか?とにかくサインは諦めた。
「この歌には力があるんですよ」
 小堺さんが言っていた。力があるなら、どこかで何か犠牲になっているんじゃないのか。俺は不安になってその人の所へ行ってみた。
 その人は中央に眼が描かれた石版になっていた。歌が歌われるたびに、その人の生命力を吸い取って石版の石化が進んでいた。
「もう、お別れだね」
 そう言っていた記憶が俺の脳裏をよぎる。
「やめろ!やめろおおお!!歌をやめてくれ!!」
 俺は叫んだ。しかしコンサートの中誰も俺の声を聞いてくれる人はおらず、俺は石版の上でひとり打ちひしがれていた。
 
 という夢を見た。印象的だったがあまり気分のいい夢ではなかった。やはり疲れているせいだろうか。それともGEのシナリオを早く作れという脳内の警鐘だろうか。
 左にあるアンテナは自動的に更新順に並んでくれるらしい。これは便利だ。

 30歳まで童貞だった人は魔法使いになれるらしい。