ラーメンと場

自分が地元で最もうまいと思っているラーメン屋は、店内の携帯電話の使用を禁じている。別に携帯電話を使ってもラーメンの味が落ちるわけではないのだが、店の雰囲気や他の客が静かに味わって食べることへの配慮の一つだろう。やりすぎではないかと言われたこともあるが、とにかく、そこのラーメンは格別にうまい。
 
コールドプレイというバンドの人が、ライブ中にタンバリンを叩いていた観客に対して、曲を止めて「君は素敵だがこの曲にタンバリンはのせたくないんだ」と言ったことがニュースになっていた。ライブに来てもらっているのにお客に注意するなんて、と思う人もいるかもしれない。しかし、良いサウンドは良い再生機器をそろえればいつでもどこでも聞ける時代になった。

ライブでしか体験できないもの、それは場だ。多くの観客がプレイヤーと一体となって作り上げるあの空気は、ヘッドホンでは味わえない独特の感触を与える。それには観客もプレイヤーの一部であることも大事だが、やはりその場を作ることに対してプレイヤーも観客も同じベクトルを向いていることも必要だ。一人で盛り上がるならカラオケルームでもできる。ライブやコンサートでは、一人でもりあがることよりもその場と曲が一体となって「音楽」であるべきだ。

コールドプレイが観客に向けたメッセージとは、そのようなものではないのか。