だが俺はここであえて安いほうを使う

殺人エイ「地球規模の変化に対しては、人間もエイも、スルメイカも無力。たとえ冷凍でも」
俺「しかし、世界がなくなることを恐れていては、何もできません」
殺人エイ「では仮に殺人エイたる自分が24時間後にあなたを殺すとして、それまでに何かしておきたいことはありますか」
俺「それは――
 
 生まれて、消費して、死ぬ。というだけのサイクルでは、この星のただのごくつぶしであってやはり何かを残したほうが良いと思う。それは他人に対する影響力や変化であってもよいし、資産でもよいし、子孫でもよいし、作品でも良いと思う。食物連鎖のバランスを保った、という意味では食って死ぬことは何か寄与しているのかもしれないが、人間には知性があるので残すべきものの選択肢に作品などを候補としてあげることができる。
 
 かつて自分はこの問いの答えとして、「今作っているRPGの構想をできるだけ詳細にメモにまとめてスタッフに渡すこと」と日記に書いていたように思う。たかがゲームが一番大事なの?と聞かれるかもしれないが、空き缶つみ世界一で記録を持っている人は空き缶つみをやるだろう。価値観など人それぞれだ。
 
 人間国宝の彫刻家の作業風景は、まるで神が人に乗り移ったかのような動きをするという。自分の世界観をしっかり持っている人にとっては、他人も殺人エイも大差ない。他人の反応や結果はあとからついてくるものであって、自身は世界観を作り上げるために全力を尽くせばよいと思う。