ここで動かねばどこで動くというのか

現在、会社では自分を含めた3人のチームで仕事を進めている。
うち一人は女性で、自分より3つくらい歳が上だが、仕事場であることもあってそれほどしゃべることもない。
 
最近不景気の波が会社にもきて、派遣の人や、同期でも何人か会社を辞めていった。
自分の隣の人も、最近帰るのが早くなり、そういえば上長と何か相談をすることも多くなったように思う。
ひょっとすると、もうすぐ会社を辞めてしまうのではないのだろうかと、しばらく前からそんなことを考えていた。
 
自分も、会社に入ったばかりでありながら、この職は自分に向いてないのではないのだろうかなどと悩んだことがあった。
チームは今は3人。一人でも欠ければ仕事は回らない。だがそれよりも、自分の人生の方向を決めるためには積極的に
情報を仕入れたり、行動したほうが良いと今でも思っている。
 
とりあえず、隣の人がやめると言う話は聞いていなかった。だから、なおさら不安になった。
自分は何度か、隣の人を含むチームの人に自分の進むべき道について相談にのってもらったこともあった。
仮に、近いうちに会社を辞めるとして、自分には何の情報も与えられないというのが、なんとも悔しくて仕方が無かった。
 
それで、最近はそのことでよく眠れない日もあった。仮に二人になって、仕事がきびしくなるならないよりも、やはり人間として
何かそういうときは話があってもいいのに。しかし自分は入ったばかりの新米で、そんなことを真っ先に伝えられる
ような人間ではないのかもしれない。そもそも隣の人はあまり自身のことを喋らない人だし、むしろ自分のことを気遣って
その話をしていないのかもしれない。別に、特別な感情を隣の人に抱いていたわけではないが?
そういうことが頭の中をぐるぐる回る日が続いた。
 
今日は今年最後の出勤日だった。このまま正月に突入すれば、このわだかまりは長くひきずられてしまう。
考えをめぐらせている間に、大変気持ちが不安定になってきた。自分から進路を迷っているといっておきながら、
人の進退を心配するとはめでたい性格だ、などと思った。辞めるという答えが返ってきたとき、自分は
どう動けばいいのだろうか。しかし、何もないままあっさり辞めるとだけ告げられるのは、もっと嫌だ。
金沢とは違う紙吹雪のような雪の舞うこの日、ここで動かねばどこで動くというのだろうか。
 
一斉退社時刻の直前、隣の人を捕まえて尋ねた。
 
「俺の勘違いなら良いんですが、会社を辞められるんですか?」
 
19:26