メイド達
真空管というものは、すでにほとんど流通していない。真空管アンプの音を変えてみたいという衝動に駆られた場合、電気街と呼ばれる街の数少ない真空管を売る店に出向くしかない。
結局目当ての真空管はなかったが、若い者はあまり相手にされない感もあった。しかしこの電気街―大阪日本橋も、俗に言うオタクの波に浸食されていた。パーツ屋と呼ばれるような店はかなりシャッターを下ろしており、街の半分はゲーム・コミック・人形・メイドなどで埋まってしまっていた。真空管のご主人は、この光景をみて何を思うのだろうか。ざっと探したが電子部品をそろえているのは金沢にもあるマルツ電波くらいだった。
炎天下でメイドはティッシュやチラシを配っていたが、何か中途半端になってしまった街を少し残念に思う。既に、レアなパーツはネットで注文したほうが交通費もいらず、説明も豊富な時代が来た。いずれ街の様相も変わっていくことだろう。はるか昔より愛されている真空管の音色は、昔と変わらず美しいのに、真空管の存在は人々から忘れ去られる日もいずれ来るだろう。
メイド達に、真空管の音を一度聞いてみてもらいたい。
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