5月の雨

 雨は湿気を増やし、歩いているだけで汗をかきやすくなる。傘は荷物になるし、電車は混み、渋滞が増え、気分は憂鬱になる。しかし雨は嫌いではない。私は日照時間日本最低の地域で育った雨の子で、どんより曇り空にしとしと雨が降るこの京都の街も、まるで金沢のように感じられるからだ。金沢のことを「小京都」と呼ぶならば、私にとって京都は「大金沢」だ。
 面接は自分を疑うほど順調に進んだが、帰りの電車で席を確保できなかった。走行中に開いてもらっては困る乗降口の窓から、猛スピードで過ぎ去る雨の田園風景とトンネルの黒い壁を眺めながら私はこんなことを思った。

 「そうはいかんざき!って汎用性が高いわりにはあまり使われていないな」

 そして金沢駅についた。
 
 「何だこの天井友禅流しは」

19:34